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いつか愛してるという言葉がなくなるその日まで
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君.と.僕 / 悠太

またまたリハビリでかきかき。
ちょっとマイナーめなジャンルですが、恋人設定の糖分低め。
センチメンタルになっちゃうメールのおはなし。



前に雑誌で「さくらんぼはぶりっこみたい」って男の子が言ってたのを思い出して、履歴の最初にあったさくらんぼをあわてて消し、きらきらひかる王冠に変えた。
「よしっ、送信っ…と」
付き合って一ヶ月を迎えようとしている私と悠太はいまだぎこちないメールのやりとりを繰り返している。私が一番気にかけているのは絵文字で、相手に可愛いと思ってもらいたいけどぶりっこに思われるのはいやだ。確かに私が男の子だとしたら意味もなくなんでさくらんぼ、って言いたくなるだろうけど、女の子同士のメールでさくらんぼだって四つ葉のクローバーだってハートだって、日常茶飯事なのだ。
「男の子ってめんどくさいなあ、女でよかった」
女も女でめんどくさいけどね。けど微妙な女心なんてものを生まれてよかった、と悠太と付き合い始めて初めて思った。ささいなことでのドキドキが、不安が、悠太を思っている証拠で、それが愛しくてたまらない。今日部活から帰ってきたときの「明日の予習何ページ?」っていう悠太のメールからはや3時間。そろそろ10時をまわるころだけど、メールはまだ続いている。また可愛い女の子の歌声が部屋の中に響く。
『そろそろ時間大丈夫?』
「…悠太やっぱ私とメールするのめんどくさいのかなあー」
向こうはただの心配かもしれないが、私はメールしている途中で時間を気にされるのがものすごく嫌なタイプなのだ。わがままに聞こえるかもしれないけど。好きな人にまだやめないでもいいの、なんて聞かれるのがいやなただのチキンなんだけど。
「だいじょうぶ…だ、よ…っと」
慣れた手つきで携帯のボタンを押す。カタカタと鳴ってディスプレイに現れる文字を見て、ため息をついた。もし悠太が私とメールするのめんどくさがってて今も次のメール来ませんようになんて思っていたらどうしよう。だって私は少しでも悠太とつながっている実感がほしいからすぐにメールをできる口実ばっかり探しているぐらいなのだから。
「今日のうたばん見た?」とか「明日雨振るらしいね」とか「さっきナメクジでたんだよ」とか。そんなどうでもいい話悠太は嫌がってたりなんかするのかなあ、いやだなあ、私と同じ気持ちだったらいいのに。その気持ちと比例しつつラブソングは無機質な機械から鳴り響く。
『ならよかった。部屋に窓ってある?』
「窓…?なんで窓?」
本当になんで窓なんだろう。私の部屋は二階のすみっこで、窓と小さな天窓がついている。幸い今日は晴れていて星空がとっても綺麗だった。…じつはそのことも悠太にメールでもしてしまおうかと思ったぐらいなんだけど、「今夜は星がキレイだね」…なんて!ナルシストみたいに聞こえたら嫌だからやめた。直接言ったら差し支えない言葉なんだろうけど、メールでゴシック体に変換されるとどうしても本当に言いたいことは伝わらなくなってしまう。
今夜も星がキレイだった。
窓を覗くと満月で、なんだか得した気分。こんなにちゃんと星空をみたことも久しぶりだった。きっと悠太に言われてなかったら今日もこんなに月がきれいなことに気付かず月の周期を越していたのだろう。なんてまたロマンチストなことを考えていたら不意にまたあの指定着信音が鳴った。悠太からだった。
悠太は几帳面な性格で、返事が帰ってくるまで自分からメールはなかなかしない。まだ私は、返信していない。いつもならきっちり二行ぐらい書いてくる悠太のメールが、今日は一行だったのも不思議な感じで、書いてある内容も、見てついつい笑ってしまったぐらい。
『今夜は月がきれいだね』
ナルシストっぽい。自分で思ったけど、悠太と同じ気持ちになれたこの一瞬だけは、悠太がナルシストでもいいかなあなんてそんな淡い女心を抱いてみたりした。今夜は月がきれいだった。



夜空に足を浸ける




(ちょっとマイナーなジャンルかなとか思いつつ。私的にはかなりメジャーなジャンルなんですが…どうでしょう?久々には長い文はかけませんな。半分実話です)

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